天切り松 闇がたり〈第3巻〉初湯千両
浅田次郎
いらぬ戦にかり出されて死んだことが、名誉の戦死でござんすかい。
どんな破れかぶれの世の中だって、人間は畳の上で死ぬもんだ!
つくづくまっとうに生きるってコトがどんなことだかわかる。義理を通して筋を通して、辛抱して生きること。格好が良すぎる。
初湯千両:寅、勲
湯屋のお金を落として泣く子にかかわって、過去を思う寅兄ぃ。
共犯者:常次郎
百面相の書生常、共犯者は?
宵待草:おこん、竹久夢二
思いつくままに生きることが芸術家の宿命ならば、不幸ではないにしろこれほど難儀な人生はあるまい。
恋にそのままなびいてしまえばこれほど楽なことはないだろう。恋を知りたいと思いながら引き返していかねばならないのはやっぱり職人だからかな。
大楠公の太刀:栄治、森鴎外
死にゆく幼馴染の小さい頃に縛られた縄を解いてやりましょう。
道化の恋文:康太郎
オワライクダサイイツマデモ
職は一芸。一芸をとことん磨けァ、誰だってらしく見えるのァ当たり前だ。その昔ァ、湯屋に行ったって、男の稼業はそうと知れたもんだ。まったく、素人だらけの世の中になったもんだの。
そのかわり、のし上がるのは並大抵じゃなかっただろうしね。背中に職業が透けて見えるんだもの、自由恋愛なんて絵にかいた餅ってやつだよね。
銀次蔭盃:銀次親分、安吉親分
男の言いわけは、体でするもんだ。
上野の駅でやっと出てきた懲役にその場で連れ戻された銀次親分とはめられた安吉親分の邂逅。涙なくては読めませんぜ。
自分より気の毒な人間のいるうちは、辛抱をしなけりゃいけない。上を見ずに下を見て歩け。自分よりかわいそうな人間だけを、しっかりと見つめながら歩くんだよ。
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